浦和レッズがACL完敗。
興梠慎三から橋岡大樹に託された深い思い (2ページ目)
「サポーターの皆さんが、本当に素晴らしい雰囲気を作ってくれました」と橋岡は振り返る。
「試合が終わったあとにモニターで見たんですけど、涙を流しているサポーターがいて、僕たちと同じ気持ちで戦ってくれていたことを感じました」
込み上げるものをなんとか押しとどめるように、橋岡はそう話した。彼自身、「通用する部分もあった」と話すように、前半は相手の突破を阻んだり、鋭いクロスをあげたりするシーンもあった。だが時間の流れとともに地力の差が顕著に表れた。
そして後半29分に失点。ジョビコンコのクロスを最後はサレム・アルドサリに決められてしまった。興梠が「あの1点がすべてだった」と振り返ったゴールを喫した後、浦和は懸命に巻き返しを図ったが、アディショナルタイムにも、カリージョにドリブルから折り返され、ゴミスに駄目押しのゴールを喫した。
「カリージョ選手と僕が対峙することはありませんでしたが、見ていてすごく速かったです。世界に出たら、ああいう選手も止めないといけないので、もっともっと気を引き締めてやっていかないと」
試合終了後、プレス席の反対側のタッチライン付近で、橋岡は仰向けになり、天を仰いだ。その後の興梠とのやりとりについて訊かれると、背番号27は次のように答えた。
「興梠選手はキャプテンマークを巻いて、チームを引っ張ってくれました。口には出していなかったですけど、きっと僕はまだ20歳でこれからもっとすごい舞台を経験するかもしれないので、この悔しさを忘れないで、また前を向いてやっていけ、と。そういう意味が込められていたのかなと思います」
一方の興梠はこんな風に明かした。
「僕は鹿島(アントラーズ)でACLを戦ったことがあるので(わかるけれど)、ファイナルまでたどり着くのは簡単じゃないよ、とずっと思っていた。優勝できなかった悔しさはあるけど、ここまで来られたのは奇跡的なもの。負けてしまったけど、胸を張ろう、倒れるなよ、という感じでした」
そのようにして立ち上がった20歳の橋岡は、プロになって2年目で得難い経験をした。そして来年には、東京五輪に臨むチームにも名を連ねる可能性が高い。
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