広島の最多得点はウイングバック。
柏好文が32歳でも右肩上がりの秘訣

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 ときに、もっと評価されていいと思う選手がいる。サンフレッチェ広島の柏好文も、そのひとりだろう。

 今シーズン、ここまでJ1で8得点。チーム内における最多得点である。特筆すべきは、彼がFWでもなければトップ下でもなく、ウイングバックだということだ。

積極的な攻撃参加を見せるウイングバックの柏好文積極的な攻撃参加を見せるウイングバックの柏好文 結果こそスコアレスドローに終わったが、11月23日に行なわれたJ1第32節の鹿島アントラーズ戦でも、柏はたびたびサイドから好機を作り出した。

 前半30分には、逆サイドから展開されたボールに対して、鹿島の右SBを務める内田篤人の裏に走り込むとクロスを供給。前半42分には巧みなパスワークでマークを外すと、ペナルティエリア内の森島司へと鋭いパスを通した。得意のドリブルで自ら仕掛けるだけでなく、周囲を使うプレーにも磨きがかかっている。

「(川辺)駿やモリシ(森島司)といった若い選手たちが試合に絡んでくるようになったなかで、チームとしてボールを持てるようになってきているのは大きいと思う。そこには、自分たちが積み重ねて確立してきたものがある。

 左サイドに関していえば、自分とモリシ、そこに(佐々木)翔やゴロー(稲垣祥)が加わって、たとえ相手に対策を練られたとしても、しつこくパスをつないでSBの裏のスペースに侵入していくことが何回もできていたと思う。しかもその崩しが、どこが相手であってもできる。練習からやってきたものが自信を持って出せているからこそ、相手の隙を突くことができていると思います」

 得点数に表われているように、柏の真骨頂は鹿島が主導権を握りつつあった後半に見られた。オフサイドにはなったが、アディショナルタイムには速攻と見るや自陣から駆け上がると、ドウグラス・ヴィエイラのパスを受けてシュートしたのである。

「どちらも得点を獲りたいという思いから、全体的に間延びしていたので、相手がつきにくいところは斜めに走ることだと思った。結果的にオフサイドになって悔しいですけど、(相手ゴール前に)侵入できたところまではよかったので、これを続けていくことが大事だと思う。オフサイドになったシーン以外にもチャンスは作れていましたからね」

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