仲川輝人のゴラッソが証明する、日本代表「超」級のスピードと技術 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Hiroki Watanabe/Getty Images

 札幌の3バック(3-4-2-1)は、両サイドが大きく開く横浜FMの3FWにてこずった。左WB菅は仲川の対応に追われて、攻撃参加ができずに終わる。意図的なのか、結果的なのか、その3-4-2-1は4-4-2に変化していた。となると、その左サイドハーフには、本来2シャドーの左寄りを受け持つチャナティップが流れてこなければならない。そうでないとバランスは取れないが、チャナティップは、その後方で構える菅からのサポートが望めないため孤立。居場所を真ん中寄りに求めようとした。その結果、札幌は左サイド(横浜FMの右サイド)で、数的不利に陥った。仲川の活躍はポジション的な必然性もともなっていた。

 先述の2点目の場面では、自軍左サイドで菅が後手を踏むと、札幌の3CBの左を担当する福森晃斗が応援に駆けつけた。つまり、中央の守りは手薄になっていた。仲川の折り返しをエリキに易々と頭で決められた大きな理由である。仲川の右ウイングとしての存在感は増すばかりの状況にあった。

 しかも、この2点目のアシストプレーは序章に過ぎなかった。前半22分、仲川が相手DFラインの混乱に乗じて右から折り返すと、そのボールは札幌のMF深井一希のハンドを誘う。判定はノーファウルに終わるが、この試合最大の見せ場は、さらにその1分後に訪れた。

 横浜FMは、自軍ペナルティエリア内でボールを拾った左ウイング、マテウスがその深い位置からドリブルでピッチ中央を駆け抜ける。センターサークル手前で相手に潰されかけたその瞬間だった。仲川は疾風の如く現れるや、マテウスに代わってドリブルを開始。目にも止まらぬスピードで、札幌の大柄な守備陣を真ん中から切り裂いていった。身長161cmの小兵が、俊敏なステップワークを生かした高速ドリブルで、その間隙をグイグイと突く。GKク・ソンユンと1対1になるのは、アッという間だった。

 従来の高速系の選手は、この途中でドリブルを乱しがちだ。スピードが速すぎるため、サッカー選手に最も必要とされる、相手の逆を取る動きができなくなるのだ。永井にもその傾向がある。GKとの1対1を外してしまうシーンをこれまで幾度も見てきたが、仲川は違った。トップスピードに乗りながらも、GKに向かうタイミングを見計っていた。

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