J2降格、五輪落選、ケガ。青山敏弘はしつこいくらい何度も這い上がる (2ページ目)

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi
  • (株)サンエス秋田耕二●撮影 photo by Akita Koji

―― ベンチスタートの際、ベンチから飛び出して盛り上げたり、指示を出したりしていたのが印象的でした。「チームの一員になりたい」「力になりたい」といった気持ちが伝わってくるような。

青山 一緒に戦いたかったんですよ。それに、最初のカードとして切ってもらうことが多かったから、前半から試合に関わっていないといけないとも思っていて。後半開始10分以内に出番が回ってくるので、自分のやるべきこととチームの状況を常にマッチさせておかなきゃいけなかった。

 テンションもそうだし、フィジカルの準備も、頭の中もそう。そのためには、前半から一緒に戦わなきゃいけない、と思っていましたね。

―― 昨シーズン限りで森﨑和幸さんが現役を退きました。偉大な先輩がチームからいなくなったことで、今季あらためて意識していることはありますか?

青山 このチームには、大事にしている伝統ややり方というものがあって。でも、和さんは自分にそういうことを口で伝えるんじゃなく、自ら示すことで伝えてくれた。だから、僕もそういうスタンスで、示していければいいなって。もちろん、言うべきタイミングでは言っているつもりですけど、やっぱり受け取る側が感じ取ることも大事だと思うので。

 そう言えばこの前、面白いことがあって。ベテランの域に差しかかってきた後輩がこんなことを言ってきたんです。ある選手がチームの規律を守らなかったと。それで、それはダメだと伝えたけれど、うまく伝わっていないようだと。「自分の伝え方が悪いのかな」って言うから、僕は「俺が言っても伝わらないよ。でも、おまえは間違ったことは言ってないから、それでいいじゃん。いつか気づくときがくるからさ」って。で、「そもそも、俺からしたら、おまえも昔、そうだったよ」って(笑)。

―― その選手も若い頃、青山選手の話を理解しているのかどうかわからなかった(笑)。

青山 そうなんです。昔は「こいつ、本当にわかっているのかな」と思っていたんだけど、その彼が後輩にしっかり言えるようになっていた。ああ、わかっていたんだな、伝わっていたんだなって。それがすごくうれしくて。

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