ブレない横浜F・マリノス。
タイトル奪取の現実味が一気に増した

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Kyodo News

 首位の背中をはっきりと視界にとらえる快勝だった。

 J1第28節、横浜F・マリノスはジュビロ磐田と対戦。チームを率いるアンジェ・ポステコグルー監督が「(シーズン終盤の)この時期は、どのチームも勝ち点3を取ろうとしてくる」と語ったように、J1残留のためにはもう後がない最下位の磐田を相手に、しかも、敵地に乗り込んでの試合は、厳しい戦いが予想された。

 事実、「前半は(試合を)コントロールできず、相手のペースになった」とポステコグルー監督。対する磐田のフェルナンド・フベロ監督曰く、「前半30分まではポゼッションで上回り、非常にいい出来だった」。たしかに、横浜FMの戦いぶりは試合序盤、やや落ち着きに欠いていた印象は否めない。

 布陣全体をコンパクトにし、DFラインを高く保って戦う横浜FMに対し、DFラインの背後に長いボールを蹴り、シンプルにゴールへ向かってくる磐田。横浜FMはこれにつき合うかのように、縦に急いで攻めてはボールを失い、逆に磐田の攻撃を許す。そんな忙しない展開が続いた。ポステコグルー監督が語る。

「この時期になると、1試合1試合の重要性がより大きくなり、選手たちが力んだり、焦ったりしてしまうと、(試合の)コントロールの部分で(本来のやり方を)見失ってしまう。自分たちがボールを持っても、失ってしまう場面が多かった」

 それでも終わってみれば、2-0。横浜FMが、技術、戦術、試合運びと、すべての面で磐田を上回っての勝利は、点差以上に力の差を見せつけたと言ってもいい。

ジュビロ磐田に快勝した横浜F・マリノスジュビロ磐田に快勝した横浜F・マリノス 両者の間にあった力の差は、目指すサッカーをブレずにやり続け、積み重ねてきたものの差、と言い換えてもいいのだろう。

 そのことは、横浜FMのふたつのゴールにはっきりと表れていた。

 まずは、30分の先制点である。

 ゴールキックを自陣から短くつなぎ、右から左、そしてまた左から右へと、磐田を揺さぶるように動かされたボールは、中央寄りにポジションを取り、フリーで待っていた右サイドバックのDF松原健へ。すると、その瞬間を見逃さずDFラインの裏へ走り込んだFW仲川輝人へ、絶妙なタイミングで松原からスルーパスが送られた。

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