ブラジル人記者が見た鹿島の強さ。ACL敗退もジーコはチームを誇った (3ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳translation by Tonegawa Akiko

 カンナバーロの采配は見事だった。ヨーロッパ随一のDFだった彼は、中国人選手たちのプレーもよく理解し、数人のブラジル人選手たちを有効に使っていた。パウリーニョはすばらしかった。中国代表でプレーするエウケソンには多少失望したが、中国人選手もよくやっていた。一方の鹿島は才能の宝庫だった。印象に残る選手は何人もいたが、特に後半から入った相馬勇紀はスピードがあり勇敢で、何度も広州を危険に陥れた。またMF名古新太郎、韓国人GKクォン・スンテも注目に値する活躍を見せていた。

 私はジーコとの約束の場所に急いだ。この日のうちに東京に帰るので、あまり時間はない。ブラジルサッカーの、いや世界の至宝ジーコが姿を現した時、彼はいつもと変わらぬ笑顔で両手を広げ私を迎えてくれた。私は思わずぶしつけに尋ねてしまった。

「ジーコ、君は悲しくないのかい? 怒っていないのかい? 君のチームは敗退してしまったんだよ!」

 質問というより、私の率直な思いだった。それに対し彼は、いつもと変わらぬ落ち着いた様子でこう言った。

「これがサッカーだよ。他に何が言える? サッカーは喜びを与えてくれる、すばらしい感動を与えてくれる。と同時に、悲しみも同じくらいに与えてくれる。それに私のチームはこんなにいいプレーをしたんだ。どうして悲しむ必要がある? 自分たちの選手が、持てるすべての力を出し切ってプレーしたのに、何を怒ることがある? 今日は5点入ってもおかしくなかった。もしあの最後のシュートが、最後のチャンスボールが入っていたなら、すべての状況も、今のこの私たちの会話もまるで違っていたろうが......でもまあ、それがサッカーなのだよ」

 東京に帰る間にも、ジーコはいくつかのメッセージを送ってくれた。

「我々は準々決勝で手強いチームと当たってしまったし、審判のジャッジにも不満はあった。しかし、私は幸せな気持ちで家に帰ることにする。今日のサポーターはすばらしかった。本当のフェスタだった。監督もよい采配を見せてくれた。それに我々は敗退したとはいえ、決勝トーナメントでは一度も負けてはいない。選手たちは顔を高く上げて堂々とピッチを後にしていい。私はこのチームをとても誇りに思うよ」



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