柏レイソル、ネルシーニョ監督の選手を鼓舞する「言葉の圧」がすごい (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Hiroki Watanabe/Getty Images

 リードを許した柏だが、後半は徐々に戦力差を見せつける。相手の足が鈍ってきたこともあって、前線のクリスティアーノ、オルンガ、ジュニオール・サントスにボールが入り始める。とくにクロスに対してはオルンガが絶対的な高さを見せ、制空権を握って押し込み、動揺を与えた。

 60分だった。クリスティアーノが蹴った右CKを、オルンガがファーポストで、難しい体勢から無理やりヘディングで叩く。これが左ポストを直撃し、その跳ね返りを染谷悠太が押し込んだ。

 同点に追いつく前、ベテランMFの大谷秀和が交代で入っていたが、柏はこれでバタつきが収まった。

「(交代出場するときに)ネルシーニョ監督に言われたのは、まず守備のところ。相手にやらせない。攻撃に関しては、ボールを引き出し、落ち着いて回す。監督は、『つなげ』『蹴れ』と(矛盾したことを)言いますが、どっちも正しくて。結局は自分の判断。相手を引き付けないと周りは空かないし、前が準備できているなら蹴るべきで、監督はその判断を求めている。まあ、監督自身の言葉の圧が試合の圧よりすごいですけど(笑)」(柏・大谷)

 今シーズン、柏はネルシーニョ監督が再任し、J1復帰を狙う。際立つのは、やはり勝負強さか。それはブラジル人指揮官の厳しさが生み出すものだろう。ひとつひとつのプレーに対し、明快に答えを示し、複数得点をしたブラジル人FWにも、「守備はできていなかった」と厳しさは変えない。硬骨な姿勢でチームに甘えを許さず、そのおかげで拮抗した勝負を制し、劣勢も挽回できるのだ。

 さらに柏は愛媛をじわじわと追い込み、ついにノックアウトする。80分、右サイドをクリスティアーノが攻め上がると、エリア内で江坂任が受ける。江坂は巧妙にシュートコースを作ると、ニアサイドに左足で流し込む。必然的な逆転劇だった。

 愛媛は、最後に力を振り絞っている。終了直前、右サイドを抜け出した長沼が、絶好のクロスを折り返す。しかし、中の選手は合わせきれなかった。

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