要因はふたつ。最下位だった清水エスパルスが急浮上できたのはなぜか (2ページ目)

  • 望月文夫●取材・文 text by Mochizuki Fumio
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 そんな篠田監督について、主力選手のひとりであるMF金子翔太はこう語る。

「指示の声が大きいのもあるけど(笑)、メリハリのある練習によって(選手の)気持ちを前向きにさせてくれる。監督自ら『相手に絶対に勝つ』という思いを前面に出して(選手たちを)試合に送り出すなど、(篠田監督は)モチベーターだと思う」

 その"モチベーター監督"の選手起用も、チームを好転させた。「練習から前向きに取り組んでいる。練習試合でもよくゴールを決めている」(篠田監督)と、前監督のもとではリーグ戦での出番がなかったルーキーのMF西澤健太を積極的に登用。後半から送り出した横浜FM戦、初めてスタメンで起用した名古屋戦と、2試合連続でアディショナルタイムに決勝ゴールを叩き込んだ。

2試合連続で決勝ゴールを決めた西澤健太2試合連続で決勝ゴールを決めた西澤健太 篠田監督の抜擢に見事に応え、一躍チーム浮上の立役者となった西澤。今後のさらなる活躍へ、その意欲は増すばかりだ。

「(自分が)がんばっている姿勢を(篠田監督は)評価してくれたのだと思う。(試合に)起用してくれたので、絶対にその期待に応えようと思った。まだミスもあるので、反省しながら次のステップを目指したい」

 好調・清水を支えるもうひとつ要因は、チームの"エース"であるドウグラスの完全復活だ。

 昨季途中に加入して、15試合出場で11ゴールを量産したドウグラス。シーズン終盤を7戦負けなしで終え、残留争いに加わっていたチームを最終的に8位まで押し上げたのは、間違いなく彼の力によるところが大きい。今季「トップ5入り」という目標を掲げたのも、そんな"絶対的エース"の活躍を見越してのことだった。

 しかし、今季開幕前に不整脈が発覚して戦線離脱。シーズン序盤まで、母国ブラジルに帰国して治療に専念していた。ようやく復帰したのは、第5節の湘南ベルマーレ戦。途中出場でピッチに立ったが、長いブランクの影響もあり、本来のキレのあるプレーぶりからはほど遠い状態にあった。

 それでも、徐々に調子を取り戻していったドウグラスは、篠田監督の初陣となった大分戦で今季初ゴールを記録。「ほぼ100%(の出来)に戻った」と自信の表情を見せると、そこから前節の名古屋戦まで5試合連続、計6ゴールを決めた。まさに"エース"の完全復活が、快進撃の原動力となっているのだ。

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