2019.06.28

要因はふたつ。最下位だった
清水エスパルスが急浮上できたのはなぜか

  • 望月文夫●取材・文 text by Mochizuki Fumio
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 昨季J1リーグを8位で終えた清水エスパルス。「トップ5入り」を目標に掲げて臨んだ今季、開幕から苦戦が続いた。

 リーグ最多の大量失点に苦しみ、2分4敗と未勝利のまま、第6節を終えたところでついに最下位に転落した。第7節のジュビロ磐田との”静岡ダービー”でようやく今季初勝利を挙げると、続くセレッソ大阪戦も勝って2連勝。この時に一瞬、急浮上への期待も膨らんだが、第9節から無得点での3連敗を喫し、順位は再びJ2自動降格圏内に沈んだ。

 そこで、チームが好転する可能性が低いと判断したクラブは、昨季から指揮を執ってきたヤン・ヨンソン監督を解任。新たな指揮官として、篠田善之コーチを昇格させた。

 すると、この監督交代劇を契機にして、チームは一変する。

 新指揮官・篠田監督の初采配となった第12節の大分トリニータ戦で、チームはリーグ戦4試合ぶりの得点をマーク。当時3位と勢いのあるチームを相手に1-1と引き分けた。そして、続く第13節のベガルタ仙台戦では、終了間際にFWドウグラスが勝ち越しゴールを決めて、撃ち合いとなったゲームを4-3で制した。

 さらに、第14節の松本山雅戦を終盤に追いついてドロー(1-1)に持ち込むと、その後、第15節で横浜F・マリノス(3-2)、第16節で名古屋グランパス(2-1)と、上位陣を連続撃破。混戦模様の下位グループを抜け出して、暫定ながら第16節終了時点で12位へと順位を上げた。

 チーム浮上の要因となったのは、いったい何なのか。

 ひとつは、篠田新監督の取り組みと、チーム、選手たちへのアプローチにあることは間違いない。

 指揮官に就任する時、「走り負けないこと。戦う姿勢を見せること。攻守の切り替えの早さと、球際を激しくいくこと」と、チームのベースとなる方向性を示した篠田監督は、選手たちに対しても「やるべきことをやらない選手は試合では使わない」と、前向きな姿勢を促した。

 そのうえで、練習では次の対戦相手をはっきりと意識したメニューを課した。その際には、相手のチーム名を連呼し、攻撃パターンに対する守備の対策など、個々のメニューの目的も明確にした。そのなかで、篠田監督の声が練習場全体に響き渡り、いいプレーには褒め言葉が、よくないプレーには厳しい檄が飛んだ。