鳥栖の豊田陽平が語るどん底からの復活劇。「ダメなら引退するだけ」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Yamazoe Toshio

 豊田だけでなく、多くの選手がプレーを改善させている。

「今は明輝さんが、自分のよさを知って生かしてくれて、『もっとシンプルにクロスを入れて、トヨを行かせ!』と伝えてくれる。今のJリーグには、自分が高さで圧倒される選手はいない。新しく入った若手選手は、『豊田は大きいだけ』と思っているかもしれませんが(笑)。

 最近、練習で背後からのクロスを左足ボレーで立て続けに決めたら、『ファン・ペルシー!』って冷やかされたんです(元オランダ代表FWロビン・ファン・ペルシーは空中のボールをダイレクトで合わせるシュートを得意とし、左足ボレーは代名詞だった)が、ボール扱いはヘタかもしれないけど、シュート感覚はあるんだぞ、と」

 豊田はそう言って、相好を崩した。気持ちに余裕が見える。腹を括っているからだ。

 6月1日のセレッソ大阪戦は0-1で敗れ、豊田も負傷で途中交代を余儀なくされた。4連勝はならず、快進撃は止まった。6月15日の浦和レッズ戦に向け、仕切り直しだ。

「自分はピッチで出せるものを出し、それでダメなら引退という決断をするだけ」

 そう豊田は言う。その気迫が、ディフェンダーをたじろがせる。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る