鹿島復調の陰に新左サイドハーフあり。白崎凌兵の能力は日本代表級 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 長いパスを送ることができる視野の広さがあり、懐が深く、細かなボール操作術に優れる。身長がそこそこある(181cm)わりに、巧緻性もある。サイドに起点を作り、攻撃に立体感を醸し出すことができる、SHらしい選手。鹿島には他にはいないタイプだ。能力的には日本代表に選ばれても不思議ではない水準にある。鹿島が今季獲得した選手のなかで、一番の実力者だ。

 逆に、昨季まで所属した清水にとってこれほど痛い話はない。鹿島では41番という大きな背番号をつける白崎だが、清水時代の背番号は10番だった。鹿島と、10番を鹿島に持って行かれた清水が直接対決したのは第10節で、清水が0-3のスコアで完敗する姿は哀れを誘った。翌第11節、清水は川崎フロンターレに敗れるとヤン・ヨンソン監督を更迭。今季の清水が苦戦するのは、当然の帰結かもしれない。

 白崎が清水時代に華々しい活躍をしていたかといえば、そうでもない。10番をつけてプレーした2017年、2018年の2シーズンでさえ、出場時間はチームで7、8番目だった。清水といえば若手がひしめくチーム。注目は、北川航也、金子翔太、立田悠悟、松原后など、白崎より若い世代の選手に集まっていた。白崎はそうした意味で蚊帳の外にいた。

 山梨学院高校2年の時、冬の高校選手権でベスト8入り。大会の優秀選手に選ばれたことで、その名前は知れ渡ることになった。卒業後、清水に入団。2、3年後にはトップチームでバリバリ活躍しそうな、スジのよさが目に留まった。ところが当時の監督、アフシン・ゴトビの評価は低かった。出場機会を求めて白崎はJ2の下位チーム、カターレ富山にレンタル移籍を強いられる。いつしか裏街道をいく"騒がれない"選手になっていた。

 2015年に清水に復帰。昨季まで4シーズンで評価を徐々に上げていったが、それでもチームの評価(出場時間)を考えると、実力の割に評価が低い選手に見えた。周囲の目は若手に向きがちで、森保ジャパンになると北川が日本代表に招集された。チームの10番、年長の実力者にとって、これは移籍のタイミングであることを示唆していた。

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