久保建英よりチームに貢献?指揮官も認める「走り屋」永井謙佑 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 磐田戦で新聞の見出しを飾ったのは久保建英だった。0-0で推移していた後半39分。FC東京は連続してCKのチャンスを得る。その2本目、太田宏介の蹴ったボールに矢島輝一が合わせ、あわやゴールかと思われたシーンの直後だった。クリアボールを後方から走り込んだ久保が左足のボレーできれいに合わせ、磐田ゴールを揺るがしたのだ。終了6分前に挙げたこの決勝ゴールは、久保にとって今季のJリーグ初得点でもあった。

 見出しを飾るのは当然といえば当然だ。一方、永井はといえば後半16分、軽い負傷を機に矢島と交代でピッチを去っていた。久保と永井。明暗が分かれた格好となった。しかしチームへの貢献度に話を戻せば、この試合でさえ、関係は甲乙つけがたくなる。

「建ちゃん(久保)は絵になる選手だなとつくづく思う。あのボレーシュートにしても、瞬間を切り取れば、格好は超一流選手のようにとても様になっている。すごいなと思う。でもその他の時間は、ほとんど何もやってくれなかった。いるのかいないのかわからないほどだった」とは、長谷川監督の弁だ。褒めているのか、いないのか、微妙な口ぶりだった。

 たしかに、この得点機以外、久保のプレーはサッパリだった。ゲームに入り込めていないという印象だった。その前の試合、後半から出場したルヴァンカップのベガルタ仙台戦しかり。ボールに絡めずにいた。

「その点、謙佑は......たしかに変なところでボールを取られたりして、うまくないのだけれど(笑)、チームには欠かせない存在。あの走力。相手ボールの時に効きますね。あのスピードで追いかけられると、相手は大変だと思いますよ」(長谷川監督)

 日本代表で出場歴があるスピード系の選手と言えば、1997年のフランスW杯予選、ジョホールバルでのイラン戦でゴールデンゴールを叩き出した岡野雅行を想起する。しかし、岡野と永井ではタイプが少々異なる。

 岡野は、陸上のランナーで言えば、バックストレッチに入って伸びるタイプ。加速力に長けたフォームのきれいな選手だったのに対し、永井は瞬く間にトップスピードに入る。ターボエンジンを搭載するかのごとく、初速に優れた馬力がある。見た目は美しくないが、サッカー競技に適しているのは永井型だ。とりわけ、相手を追いかけるプレッシングに向いている。サッサッと近づくことができるので、相手は慌てやすい。

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