攻撃サッカーから堅守チームへ。トリニータがJ1仕様になって快進撃
そこそこ戦える、とは思っていたが、まさかここまでやるとは思いもよらなかった。
大分トリニータのことである。
序盤戦の10試合を終えて、FC東京、名古屋グランパスに次いで3位。6年ぶりにJ1に昇格したチームとしては、望外の成績だろう。
開幕11試合で7勝を挙げ、3位まで浮上した大分トリニータ「そこそこ戦える」と思っていたのは、そのスタイルに起因する。昨季のJ2では、リーグ最多の76得点をマーク。2016年から指揮を執る片野坂知宏監督のもとで積み重ねてきたポゼッションスタイルに、魅力を感じていたからだ。リアクションではなく、主体的にボールを動かすサッカーは着実に成熟されており、カテゴリーがひとつ上がっても、それなりに通用するであろうと推測された。
もちろん、相手の質が高まれば、思いどおりにいかない試合も増えるだろう。それでも確かなスタイルが備わっているだけに、大きく崩れることはない。シーズン前は降格予想が多いなか、個人的には落ちることはないだろうと考えていた。とはいえ、筆者の予想はギリギリ残留圏の15位だから、ささやかな評価ではあったのだが......。
ところが、開幕戦で鹿島アントラーズを打ち破るセンセーショナルなJ1復帰を飾ると、その後も横浜F・マリノスや、北海道コンサドーレ札幌といった好調チームを次々に撃破。そして第10節でサガン鳥栖に勝利を収め、ついに3位に順位を上げている。
その勢いは、果たして本物か――。5月12日、湘南ベルマーレの本拠地に乗り込んだ一戦で、大分は決してフロックではない、力強い戦いを見せつけた。
試合は序盤から、湘南のペースで進んだ。ハイプレスで大分のビルドアップを封じると、苦し紛れに出されたパスを狙って、素早くショートカウンターを仕掛ける。大分はたまらずファウルで食い止めることしかできずに、危険な位置で次々にFKを与えていた。
湘南のミスに助けられた部分もあったが、前半をゼロで乗り切ったのが大分にとっては大きかった。本来のパスワークを発揮できなくとも、発想を変え、守備に比重を置く。いい意味での割り切りが、徐々に試合の流れを変えていった。
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