攻撃サッカーから堅守チームへ。
トリニータがJ1仕様になって快進撃 (2ページ目)
後半に入ると、大分はシンプルに湘南の背後を狙うボールが増えていく。その狙いを片野坂監督は次のように説明する。
「湘南さんのプレッシャーが非常に強いので、判断が遅くなるとボールを取られてしまう。自陣でのミスはしたくなかったので、見えているところをシンプルに使う。難しいことをすればするほど時間がかかるので、シンプルにやろうということを伝えました」
本来であれば最終ラインでボールを回し、中盤にボールを入れてから、サイド攻撃を促すサッカーを展開したかったはずだ。しかし、リスク回避を優先させ、高めに設定された湘南のラインの裏を突くサッカーにシフトチェンジしたのだ。
それゆえに、指揮官は「我々らしさというのは、今日のゲームに関しては少し物足りなさがあったかもしれない」と振り返ったが、血気盛んに攻めてくるホームチームに対して、アウェーチームが結果を手にするための有効な手段だった。
そのスタイルを機能させるには、藤本憲明の存在に触れないわけにはいかないだろう。今季J1初挑戦の遅咲きのストライカーは、開幕の鹿島戦での2ゴールをはじめ、ここまで6ゴールを記録。そしてこの日も、島川俊郎のスルーパスに抜け出すと、追いすがるDFを強さと巧さを融合させたドリブルで翻弄し、価値ある決勝ゴールを叩き込んだのだ。
「前からくる相手だったので、背後にスペースが空いてくる。そこを狙いました。(得点シーンは)ゾーンに入っていましたね。最初のチャンスで決めきれなかったので、次のチャンスでは絶対決めきるという意識でした」
殊勲のエースは、満面の笑みを浮かべながら決勝ゴールを振り返った。
JFLでシニアのキャリアをスタートさせた藤本は、J3、J2で着実に実績を積み、29歳にしてようやくJ1の舞台にたどり着いている。
まさに成り上がり人生を歩む「和製ジェイミー・バーディー」は、日本のトップシーンにおいても堂々たるパフォーマンスを続けている。今季7点目を決めて得点ランクでトップタイに浮上した藤本が、この日視察に訪れた森保一監督のリストに刻まれたとしても、決して不思議ではない。
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