鹿島をACLで首位から転落させた21歳。邦本宜裕の「意地のひと刺し」

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki photo by AFP/AFLO

 アジアチャンピオンズリーグ(ACL)グループリーグ第4節。鹿島アントラーズは、退場者を出し、10人になりながら、0-2を土壇場で3-2にひっくり返した第3節・慶南(韓国)とのアウェー戦で、16強入りに大きく前進したかに見えた。折り返しとなる第4節の慶南とのホーム戦に勝利すれば、それは早々に確定する可能性があった。

ACLで鹿島アントラーズを相手に決勝ゴールを決めた邦本宜裕(慶南)ACLで鹿島アントラーズを相手に決勝ゴールを決めた邦本宜裕(慶南) ところが鹿島は立ち上がりから後手を踏んだ。試合は慶南ペースで推移した。アウェーチームの中で目を惹いたのは、21歳の日本人選手だった。

 一昨年にアビスパ福岡を退団。昨年からこのチームでプレーしている邦本宜裕である。ポジションは守備的MF。端役ではなく、心臓部にあたる主力としてチームを支えていた。

 逆転勝利を収めた前戦の余勢を駆って一気にいきたかった鹿島だが、発表されたスタメンは、見るからに頼りない構成だった。

 Jリーグのターンオーバーで、レオ・シルバなど何人かの主力をスタメンから外したことは既定路線のように見えたが、累積警告と前戦の退場処分で出場停止となったDF、町田浩樹、犬飼智也の代役には腐心の跡がうかがえた。その結果、守備的MFが本職の三竿健斗と公式戦初出場の高卒ルーキー関川郁万の急造コンビが、センターバックを務める姿には、痛々しささえ漂わせた。

 とはいえ、試合後の大岩剛監督は内容に関してはおおむね満足している様子だった。「90分をとおしてリスクマネジメントの面、ビルドアップの面、組織的に守る面、そういったところはよくできていたと評価している」と述べた。その一方で、「悔しくて、悔しくて、いまは冷静に振り返ることができない」とも語った。

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