鹿島をACLで首位から転落させた21歳。邦本宜裕の「意地のひと刺し」 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki photo by AFP/AFLO

 格下にやられる。それは失点シーンにも垣間見ることができた。名手クォン・スンテのミスを邦本が突くという図だ。

 韓国人選手はJリーグにゴロゴロいる。キャリアをステップアップさせる場にしている。それに対して、日本人選手は中国Cリーグ、韓国Kリーグをそのような場にできていない。邦本は珍しいタイプの選手だ。

 欧州の選手には、上りの階段もあれば下りの階段もある。行き先は自国のクラブ以外にも用意されている。韓国人選手にとってのJリーグのような場所が普通に存在する。それに対して、日本人選手にはそうした場所が見当たらない。そうしたなか、邦本は福岡を解雇され、韓国に渡った。ともすると都落ちに見えるが、そこをしっかりステップアップの場にした。

 この試合のマン・オブ・ザ・マッチに輝いたことで、Jリーグのどこかのクラブに舞い戻ることができるかもしれない。この日、視察に訪れていた森保一監督の目にも止まった可能性がある。

 Jクラブを解雇された邦本の"意地のひと刺し"にやられた格好の鹿島は、グループ首位の座から陥落。この日、タクジム(マレーシア)にアウェー戦で勝利した山東魯能(中国)が勝ち点1差をつけて首位に立った。

 ACLグループリーグで鹿島に残された試合は、タクジムとのアウェー戦と山東魯能とのホーム戦だ。鹿島が従来どおりのスタイルを貫くなら、強者である山東魯能戦より、格下であるタクジム戦の方が心配になる。その用心深すぎる戦いぶりが仇にならないことを祈りたい。

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