大宮アルディージャが昨季とは違う。J1昇格候補が悪いなりに5連勝

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 もう少し眠ったままでいてくれればいいのに――。

 難敵を出し抜き、J1昇格のチャンスをうかがおうかという他のクラブにしてみれば、きっとそんな気分に違いない。

 J1昇格の有力候補、大宮アルディージャが調子を上げている。J2第10節、町田ゼルビアとのアウェーゲームを1-0で制した大宮は、第6節から5連勝。順位のうえでも、J1自動昇格圏内となる2位へ浮上した。

5連勝で2位に浮上した大宮アルディージャ5連勝で2位に浮上した大宮アルディージャ 内容だけを見れば、決してほめられた試合ではなかった。

 豊富な走力を生かしてボールサイドに人を集め、相手を押し込むサッカーを得意とする町田に対し、引いて守備を固める戦い方を選択した大宮は、FWフアンマ・デルガドへのロングボール頼みの攻撃に終始した。

 その結果、「チーム全体で簡単にペナルティーエリア内に入らせない守備ができた」(GK笠原昂史)のは確かだが、一方で「ボールが落ち着く場面をなかなか作れず、ロングボールを前線(の選手)が追うことが多くなった」(MF茨田陽生)。

 だが、「監督からは、『今週(の試合)は、割り切りと徹底がキーワードだ』と言われていた。内容は苦しかったが、我慢し切れた」と、MF大山啓輔。試合が動いたのは、両チームともにチャンスを作れず、拮抗したまま迎えた、後半開始早々のことである。

 50分、中盤でのルーズボールを拾った大山が、右サイドへパスを散らすと、DF奥井諒がゴール前へアーリークロス。これをフアンマが頭で丁寧に落とし、茨田が右足でゴールに叩き込んだ。

「点を取れたのが、いい時間帯だった。後半(開始から)すぐだったので、まだ集中力があったのかも」

 殊勲の背番号8はそう言って笑ったが、我慢の時間が長く続く試合のなかで、いつ訪れるかわからない"その瞬間"に、高い集中力と優れた技術を発揮することは、それほど簡単なことではない。まさにワンチャンスを生かしたスーパーゴール。茨田のひと振りで試合は決した。

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