「エレベータークラブ」ながら、湘南ベルマーレが一目置かれるわけ (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Nikkan sports/AFLO

 ここ数年の湘南を見ていても、曺監督が「我々は走力がストロング(強み)だとも思っていない」と語るように、しっかりとボールを動かして攻め切る形も作れるようになっている。以前のように、運動量を生かし、ただ勢いで攻め切るだけのチームではないのだ。

 何度もJ1の壁にはね返されながら、これだけの長期間、決して停滞することなく成長を続ける様は、もはや驚異的ですらある。だからこそ周囲も、このエレベータークラブに好意的な視線を送るのだろう。

 同じ監督が8シーズンも率いていながら、マンネリ化せず、チーム内の空気が常に活性化されている理由のひとつは、「定位置(レギュラーポジション)が決まっている選手はいない」という曺監督の言葉が示すとおり、正当な競争原理が働いていることにある。

 今季J1でも、(もちろん、ケガなどが理由で、必ずしもすべてが意図的ではないにしても)第6節まで全試合に先発出場した選手は、わずかに3人。その一方で、長崎総科大附高から加入した高卒ルーキー、18歳のMF鈴木冬一が、第3節の鹿島戦でJデビューを果たすなど、新戦力の起用が進んでいる。

大久保嘉人と競り合う小野田将人(右)大久保嘉人と競り合う小野田将人(右) なかでも注目すべきは、今季、JFLのFC今治から期限付き移籍で加わった異色の"新人"、DF小野田将人である。

 高校時代まで目立った経歴もなく、もちろん、J2やJ3も含めて、Jリーグでのプレー経験はなし。そんな無名のDFが日本のトップリーグであるJ1で、開幕間もない第4節から3試合連続で先発出場。しかも、デビュー戦となった第4節ベガルタ仙台戦では、貴重な先制ゴールまで叩き出しているのだから驚かされる。

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