「エレベータークラブ」ながら、
湘南ベルマーレが一目置かれるわけ

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Nikkan sports/AFLO

 湘南ベルマーレの今季の目標が、どこにあるのか。当事者がどう考えるかはともかく、客観的に見れば、J1残留だろう。

 J1復帰1年目の昨季は、順位のうえでは13位ながら、勝ち点41はJ1参入プレーオフに回った16位のジュビロ磐田と並ぶものだったのだから、それが現実的な見方である。まずはJ1残留を成し遂げたうえで、ひとつでも上の順位を、ということになるのだろう。

 湘南は曺貴裁(チョウ・キジェ)監督が就任した2012年シーズン以降、3度のJ1昇格と2度のJ2降格を繰り返してきた。

 1部リーグと2部リーグとを行ったり来たりするクラブを、海外では「エレベータークラブ」などと称するが、通常、その表現にはシニカルな意味が込められている。同じ過ち(2部降格)を繰り返し、1部に定着できないクラブ、といったところだろうか。

 しかし、結果だけを見れば、まさにエレベータークラブである湘南には、不思議とネガティブなイメージがない。

 なぜなら、成績はどうあれ、その中身は成長を続けていると感じられるからである。

 すでに「湘南スタイル」という言葉が定着しているように、湘南は曺監督就任以降、プレッシングからのショートカウンターというサッカーを武器に、現在に続くスタイルを確立してきた。湘南の選手たちは、とにかくよく走り、攻守の切り替えも速い。

 MF遠藤航(シント・トロイデン)、MF永木亮太(鹿島アントラーズ)をはじめ、毎年のように主力選手が他クラブに流出するという難しいチーム状況にあって、指揮官はそのつど、ベースは保ちつつもマイナーチェンジを施し、チームをマンネリに陥らせることなく、成長させ続けてきた。実際、曺監督就任後の湘南はJ2に再降格しても、必ず1シーズンでJ1に復帰している。それも、常にJ2を制しての復帰である。

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