湘南の運命の分かれ道。秋元陽太の罵声に、梅崎司がキレた日
湘南ベルマーレ秘話@前編
あの出来事がなければ、道は切り開かれなかったかもしれない――。
振り返れば、誰しも一度や二度、そうした経験はあるだろう。
昨シーズンの湘南ベルマーレには、まさにそうした瞬間があった。あれがなければ、クラブ史上初となるルヴァンカップ優勝も成し得えなければ、きたる2019年シーズンを再びJ1で迎えることもできなかったかもしれない。
梅崎司は2018年に完全移籍で湘南ベルマーレの一員となった だから、最後尾からチームを支えるGK秋元陽太は、力を込めて言う。
「間違いなく、あれがターニングポイントだったと思います」
だから、昨シーズン新戦力として湘南に加入し、攻撃の主軸としてチームを牽引したMF梅崎司も、はっきりと言い切った。
「あのタイミングで言い合っていなかったら、きっと昨シーズン、チームとしてうまくいっていなかったと思います」
昨シーズン、2年ぶりとなるJ1の舞台に臨んだ湘南は、開幕戦こそV・ファーレン長崎に勝利したが、その後はリーグ戦で4試合勝ち星に見放されるなど苦しんでいた。第10節のガンバ大阪戦、第11節の浦和レッズ戦はともに1-0で勝利してシーズン初の連勝を飾ったが、それでも好調は長く続かなかった。
ゴールデンウィーク期間の連戦のなか、第12節の柏レイソル戦に敗れた湘南は、続くホームのベガルタ仙台戦(第13節)も前半に喫した2失点が響き、1-3で落としてしまう。それは曺貴裁(チョウ・キジェ)監督が「何の言い訳も許されない、情けない前半」と評したほど、不甲斐ない内容だった。
大幅にメンバーを入れ替えて臨んだルヴァンカップのヴィッセル神戸戦こそ4-3で競り勝ったが、J1第14節の清水エスパルス戦では、大量4失点でリーグ戦3連敗を喫してしまう。
事件が起きたのは、その清水戦の試合後だった。後半15分から途中出場した梅崎は、流れを変えることができなかった自分自身のプレーに苛立っていた。
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