「キャプテントーレス」はいかにして
残留争いの重圧をはねのけたか (3ページ目)
世界の荒波を生き抜いてきたトーレスといえども、そのストレスは計り知れないものだっただろう。
それが10月、ベガルタ仙台戦から金明輝監督が率いるようになると、確実に変化が生まれた。
「違った練習になって、充実した準備ができている」
トーレスははっきりと言った。ボールを使う練習が多くなって、守備だけに固執しない、止めて蹴る、という原点に戻った練習に回帰した。トレーニングからボールを運べるようになって、試合では敵ゴールまで近づく機会が増えるようになった。
「(金監督は)トーレスにキャプテンマークを任せることで、士気を高めたんでしょうね。実際、それで守備もさらにするようになって、走るようになりましたから。そこもうまくいったのかもしれません」
2017年シーズンに鳥栖でキャプテンマークを巻いた豊田陽平は、そんな事情を明かしている。
事実、トーレスは試合展開に合わせて、自らの献身性を発揮するようになった。プレスバックし、ボールキープして身体を張る、という泥臭いプレーが増えた。それは守備の規律に縛られた状態とは、結果としては同じでも、根本が違った。その証として、横浜F・マリノス戦は苦しみながらも、常にゴールを狙うポジションも取って、決勝点につなげている。それは重圧を飼い慣らした末の一発だった。
――新しいプレッシャーは乗り越えられそう?
そう訊ねたとき、彼は即答していた。
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