2018.12.06

「キャプテントーレス」はいかにして
残留争いの重圧をはねのけたか

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Masashi Hara/Getty Images

 11月24日、鳥栖。横浜F・マリノス戦の後だった。フェルナンド・トーレスにほんの少しだけ、意地の悪い質問を投げた。

――君にとって、(古巣の)アトレティコ・マドリードで残留争いした経験が今に生きているのでは?

「僕は残留争いをしたことはないよ。自分がデビューしたとき、アトレティコはすでに2部にいたからね」

 トーレスは即座に否定した。

 実は筆者は、トーレスの2部でのデビュー戦を現場で見ていた。しかし、本当のところを聞き出したくて、あえて自尊心をひっかくような聞き方をした。彼はそのキャリアにおいて、チャンピオンを狙えるようなクラブにしか在籍したことはない。しかもその日は、自身の劇的なゴールで勝っていただけに、東洋人の記者にそんな聞き方をされるとは思っていなかっただろう。怒ってしまうリスクもあった。

キャプテンマークを巻き、サガン鳥栖のJ1残留に貢献したF・トーレス この日のトーレスは明らかにストレスを感じさせた。本来の彼なら決めきるシーンで何度もミス。オフサイドの判定では、堪えきれずにボールを看板に向けて蹴って、審判からイエローカードをもらっていた。

 重圧について、話をしたかった。ただ、トーレスのように落ち着き払って答えるスーパースターは、やりとりが予定調和になりがちなところがある。

「このプレッシャーの感覚は、自分にとって新しいものだよ。降格をしないように戦うっていう経験はね」