鹿島の選手のJデビュー時。椎本邦一は「親みたいな気持ちになる」 (2ページ目)

  • 寺野典子●文 text by Terano Noriko
  • 井坂英樹●写真 photo by Isaka Hideki

 勝ってACL決勝戦へ繋げる。

 試合出場機会に飢えた選手たちは、それを満たすためだけにプレーしたわけではなかった。個人の感情以上にチームの一員としてやるべきタスクに忠実だった。だからこそ、小田逸稀が値千金とも言える初ゴールを奪い獲ると再三のピンチも粘り強く耐え、逃げ切った。ボールを奪われたら奪い返す。切れない集中力が身体を動かしているように見えた。

「(経験のある選手たちが)僕たち若手に対して、試合前に『思い切りやれよ』と言ってくれました。そんな気づかいや試合中にもたくさん声かけをしてくれたので、やりやすい部分があった。もちろん開始直後は緊張感もありましたけど、ボールを触るにつれ、なくなっていった。強気で戦うことができました」と久保田は、過去、カップ戦に出場したときとは「自分のメンタルが違う」と話した。

 練習を重ねて磨いた力を試合で発揮させる。

 若い選手が躍動できる空気を経験ある選手たちが作った。先発陣、ベンチ入りした選手だけでなく、あらゆる立場の人間がチームメイトをサポートした。

 この日の勝ち点3は、鹿島の選手層の厚さを示すにとどまらない。チームが文字通り一丸となって発揮した総合力の高さがつかんだ結果だった。

「全員が割り切った考えをして戦ってくれた。ここで滅茶苦茶活躍して、ACLに出てやるという考えじゃなくて、俺らがここで、滅茶苦茶いいプレーをして勝って、ACLへ勢いをつけるという考えを持ってやってくれていたのが、今日の結果を生んだんじゃないかなと。これは本当にデカいと思いますよ。気持ちを全面に出したプレーをすれば、相手よりも先に(ボールに)触れる。今日戦った選手たちの姿勢というのは、(主力組に)刺激を与えまくった」と昌子は力をこめた。

 繋がれた「信頼の絆」を強く感じる夜は、大一番への架け橋となるのか。

2 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る