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ひとりでもサボれば成立しない。
「湘南スタイル」でVは努力の賜物だ (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

「いつかは、というのは正直ありましたね。ベルマーレにタイトルをもたらすんだ、という。こんなに早く来るとは正直、思っていなかったですけど、予選を突破したときから行くんだという想いは持っていました」

 今季、浦和レッズから加入した梅崎司は、感慨深げに優勝の味をかみしめた。この日、キャプテンマークを巻いてチームをリードした31歳のベテランは、優勝できた要因を次のように説明した。

「キャプテンとして何か言おうかとか考えたりしてたんですけど、それほど必要なかった。とにかく自分たちらしくできる言葉だったり、行動だったりというのを考えました。そこがよかったのかなと思います。絶対にタイトルを獲らなきゃいけないという義務的な心理ではなかったので、本当に『僕らのサッカーを日本に知らしめよう』ということだけを伝えたし、それがこうやって形になったのかなと」

 湘南の選手たちにとってこの決勝の舞台は、タイトルを獲るためだけに戦っていたわけではない。培(つちか)ってきた揺るぎないスタイルを、多くの人たちに見てもらう、いわばお披露目会でもあったのだ。そこには、自分たちのサッカーに対する揺るぎない自信があるからに他ならない。

 象徴的なのは、ハーフタイムに選手たちに向けられた曺監督の言葉だ。

「お互いを信じあって、我々らしく闘おう。残り45分、楽しもう」

 信頼がなければ、走り続けることはできない。ひとりでもサボれば、成り立たない。そして、自信をもって楽しくプレーできなければ、結果はついてこない。ひたむきに、はつらつと勝利に向かって走り続ける「湘南スタイル」にはチームスポーツの原点があり、だからこそ、その姿に心を打たれる。

 もちろん、筆者は湘南の関係者ではない。でも、本音を言えば、残り15分はハラハラドキドキの連続だった。いつの間にか、「湘南スタイル」に魅了され、心を動かされたひとりである。

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