鹿島が「らしさ」を取り戻した。初のアジア王者へ一歩前進

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 多くの成功を手にしてきたクラブとしては、あまりにもナイーブな立ち上がりだった。

 開始2分、左サイドを強引に突破されてコーナーキックを与えると、内田篤人のオウンゴールで先制点を献上。さらに4分後には危険な位置でボールを失い、相手のエースに2点目を叩き込まれてしまう。

まさかの序盤2失点に険しい表情で話し合いを始める選手たちまさかの序盤2失点に険しい表情で話し合いを始める選手たち 直後にピッチ上に集い、険しい表情で話し合いを始める選手たち。その姿から、鹿島アントラーズが緊急事態に陥っていることがうかがえた。

 日本勢として唯一、アジアのベスト4に駒を進めた鹿島は10月3日、ホームに韓国の強豪・水原三星を迎え、準決勝の第1戦を戦った。両者はグループステージでも同居し、1勝1敗の成績だった。実力的には五分。1点を争う展開になるだろうと予想された。

 だから、開始6分で2点も入るとは思いもよらなかった。しかも、アウェーチームに、である。その予想外を招いたのは、水原三星の"激しさ"が要因だっただろう。

 少しでもボールが離れれば、足ごと刈るような激しいタックルが飛んでくる。クサビも入れても、受け手の背後から強烈なチャージが見舞われる。まるでラグビーのような肉弾戦が至るところで繰り広げられ、その気迫に飲まれるかのように、鹿島の選手たちの動きは鋭さを欠いた。

 2点目を奪われた直後の話し合いの場面を、内田はこう振り返る。

「0-2だから攻めなくてはいけない状況だったけど、一回我慢しようと。ディフェンスをしっかりしようと話した。最近はディフェンスから攻撃のリズムができていたし、向こうもカウンター狙ってきていたから」

 鹿島はなんとか落ち着きを取り戻そうと、守備の安定を図ったが、それでも荒く激しい水原のプレッシャーに、鹿島がうまく対応できない時間が続いた。

 クラブシーンでも、代表シーンでも、対韓国でよく見られた光景である。相手の気迫に圧されてリズムを掴めないまま、苦渋をなめる。鹿島も同様の展開に陥りかけていた。

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