鹿島が「らしさ」を取り戻した。
初のアジア王者へ一歩前進 (2ページ目)
しかし、「喧嘩上等」の水原のスタイルを、鹿島は黙って受け入れていたわけではない。スイッチが入ったのは、20分の場面。ロングパスを出した安部裕葵がアフター気味に危険なチャージを受けて倒されると、鹿島の選手たちのギアが高まったように見えた。
直後の21分、球際の攻防を制し、こぼれ球にも鋭く反応したセルジーニョのクロスに、鈴木優磨が臆することなくゴール前に飛び込む。これがオウンゴールを誘発し、鹿島がようやく反攻体制を整えたのだ。
後半に入ると、鹿島の攻勢はさらに強まった。三竿健斗を起点としたパスワークでポゼッションを高め、鹿島の特長であるサイド攻撃の頻度も増加。右サイドバックの内田も高い位置を保ち、相手のサイドを押し込んでいく。
一方で水原には、前半のような激しさが失われていた。疲労による部分もあっただろうが、後方を分厚くし、ボールを奪えば少ない人数で攻めていく。つまり、リードを保つために、守りに入ったのだ。
押し込みながらも、決定的な場面までは作れない。鹿島にとってはもどかしい時間が続く。しかし、この膠着状態を打ち破ったのは、大岩剛監督の積極采配だった。
72分、ボランチを1枚削り、トップ下に土居聖真を投入する。3点目を失えば、第2戦に向けて致命傷になりかねないなかで、鹿島はあくまでリスクを背負い、前への姿勢を打ち出した。
実際に後方が手薄となったことで、カウンターを受ける危険性は高まっていた。しかし、そのリスクを冒すことが大きなリターンを生んだ。84分、途中出場の西大伍のクロスをセルジーニョが合わせて同点に追いつく。賭けに勝った鹿島は勢いを増し、逃げ切り策を図った水原はこの1点で完全に意気消沈した。
87分には同じく交代出場の安西幸輝の強烈なミドルがポストを叩き、90分にはセルジーニョがオーバーヘッドでゴールを狙う。押せ押せムードのなか、その3分後に内田の決勝ゴールが生まれたのは、もはや必然の流れだった。
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