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イニエスタ、トーレス、久保建英に見る、
スペイン流「崩しの極意」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 そこで、ボランチもしくはアンカーが、バックラインのスペースを埋め、挟み込むシステムも生まれた。

 ディエゴ・シメオネ監督が率いるアトレティコ・マドリードは"鉄壁"の守備力を誇るが、DFラインとMFラインが緊密な距離を取り、間に入った敵を殲滅する。そもそも容易にそこへ敵を入らせない。危険地帯を潰すことで、世界トップの堅守を誇っている。

 また、昨季欧州王者のレアル・マドリードも、カゼミーロをフォアリベロのように置いて、センターバックの前付近を"消す"ことを守備の軸にしていた。

 しかし一方、アンドレス・イニエスタ(ヴィッセル神戸)のような名手は、その守備陣形を"魔法"のように突き破れる。

 たとえば、湘南ベルマーレ戦ではこんなシーンがあった。左サイドで神戸の郷家友太がボールを持ったとき、しっかりマークが付かれていた。そのとき郷家は少し下がって引きつけ、後方のイニエスタへパス。湘南がラインを高くし、スペースを圧迫しようとした際だった。同時に左サイドバックのティーラトンが郷家の裏を走り、マークを外す。イニエスタはその動きを読み、鮮やかなスルーパスを出し、守備ラインを突き破ったのだ。

 イニエスタは選手の出し入れによって、マークがずれる感覚を体得している。そのおかげで、複数の選手を絡み合わせ、堅牢なディフェンスも崩せる。彼が攻撃の渦の中心となるのだ。

「個の力」

 日本サッカーではそれが叫ばれて久しいが、トップレベルではコンビネーションの確立が欠かせない。ひとりでマークを外せることは、もちろんアドバンテージだろう。しかし、それを連係につなげられるか――。そこにスペイン流の崩す極意はある。

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