2018.09.14

イニエスタ、トーレス、久保建英に見る、
スペイン流「崩しの極意」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 9月2日、味の素スタジアム。サガン鳥栖のスペイン人FWフェルナンド・トーレスは、瞬間的にマークを外そうと、何度も動き直している。しかし、パスは入ってこない。次第に流れから消された。

 ただ、トーレスは「ボールが入れば……」という体勢は作っていた。

 試合終盤、トーレスは業を煮やしたように自分が下がってパスを受け、裏に人を走らせている。ディフェンスを自分に引き寄せ、味方のマークを外した。浮かせて出したスルーパスは、コンビネーションで崩した形になり、一流選手の片鱗を見せた。

まだリーグ戦1ゴールながら、随所に才能の片鱗を見せるフェルナンド・トーレス「Desmarque」(マークを外す)

 世界のサッカーシーンをリードするスペインでは、その動作が重要視されている。たとえデカくて速くてうまくても、この駆け引きのできないアタッカーは評価されない。マークを外せないことには、身動きは制限され、ゴールは遠のく。

 バックラインの前のスペースでマークを外し、時間的、空間的余裕を得られるか。それが成立するかどうかが攻撃のバロメータになっている。

 たとえば、8月26日のガンバ大阪戦の先制点のシーンでは、トーレスが小野裕二の縦パスを、バックラインの前へ下がって受けている。これをワンツー気味にダイレクトに戻す。これだけの連係で、フリーになった小野がミドルを打ち、相手に当たったボールが得点につながった。このとき、トーレスの背後にはもうひとりのFW金崎夢生が走り込んでおり、マークを外していた。