究極の戦術に罪はない。振れ幅が大きい
F・マリノスの問題は他にある

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 松岡健三郎●撮影 photo by Matsuoka Kenzaburo

 J1第19節、横浜F・マリノスはサンフレッチェ広島に1-4で敗れた。

 ワールドカップ開催にともなう中断開け以降、横浜FMは1勝2敗。再開初戦となった第16節のベガルタ仙台戦こそ勝利したものの、その後は連敗と苦しい戦いが続いている(第18節の清水エスパルス戦は台風により中止。8月29日に開催)。

 だが、連敗したといっても、言い方を変えれば、再開後の3試合で黒星がひとつ先行したに過ぎない。にもかかわらず、横浜FMの戦いぶりに不安を掻(か)き立てられるのは、スコアの"振れ幅"があまりにも大きいからだ。

 最近3試合のスコアは、第16節の仙台戦が8-2、第17節のFC東京戦が2-5、そして今回が1-4。再開初戦を圧勝した一方で、その後は大量失点による惨敗が続いているのである。

 今季の横浜FMは、いわば"究極のポゼッションサッカー"とでも言うべき、独自性の強いサッカーに取り組んでいる。選手が大胆にポジションを移しながら、徹底してボールを保持してパスをつなぎ、相手の守備網に穴を作り出す。

 そんなスタイルは、勝敗という意味ではなかなか結果につながっていないが、内容的に見れば、徐々に熟成されている様子がうかがえる。仙台戦の大勝は、そのひとつの証明といえるだろう。

 もちろん、ボールポゼッションで相手を圧倒し、そのうえで勝ち切ることは簡単ではない。だが、ここまでの過程を見る限り、その挑戦は決して無謀なものではなく、むしろ非常に興味深いものに映る。

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