中学時代、150万円稼いだ元ヴィッセル田中英雄はJFLでも笑顔で (2ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text&photo by Takamura Misa

 だが、ヴィッセル時代から常に現状を"当たり前"と思うことなく、「周囲への感謝の気持ちを忘れずにサッカーと生きてきた」からだろう。決められた練習場がないとか、日によっては仕事で練習に参加できない選手がいる、という現状に気を揉(も)む様子はなく、むしろ楽しんでいるようにすら見える。

「プロになったときから恵まれた環境でサッカーをしてきたとはいえ、頭の片隅には常に『これが当たり前じゃない』という考えがありました。そのせいか、宮崎に来てこれまでとは違ういろんなことに直面しても、『そうなんだな』って程度で、気持ちが揺れることはなかった。というより、こうした環境でもサポートしてくれる人がいて、応援してくれる人がいることに、感謝の気持ちしかありません」

 その想いもあってだろう。彼は今でも、サインを求められると必ずその横に『全ての人に感謝!』と書き添える。

 プロになって以来、書き続けてきたその言葉には、支えてくれる人がいて今の自分があることへの感謝と、彼の、ふたつ目の目標にも通じる、地元"熊本"への想いが込められている。

 熊本県宇城(うき)市に生まれた田中は、幼い頃から母・清代美さんによって、女手ひとつで育てられた。

 サッカーにのめり込むようになったのは、小学校5年生のとき。それまでは野球と並行してサッカーをしていたが、徐々にサッカーに気持ちが傾き始め、6年生になると本気でサッカーに取り組むようになった。

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