オファーはJ3クラブのみ。その時、播戸竜二は初めて「引退」を考えた (3ページ目)
どれだけ自分が『やれる!』と思っていても、プロサッカー選手って周りに評価されて初めて契約できるもの。その周りから評価されないということは......その現実は受け入れるべきだし、それならもう、やめてもいいんちゃうかと。初めて"引退"を真剣に考えた」
そこからは時間を要した。
1998年にプロになってから20年。一度も考えなかった「引退」の二文字が頭に浮かんでは消え、浮かんでは消え、と繰り返しながら時間が過ぎていく。気がつけば、12月は終わり、プロサッカー人生で初めて所属チームが決まらないまま、新たな年を迎えていた。
「まさか、自分が引退を考えることになるなんて、正直、僕自身も意外やった。そもそもは、やめるつもりなんてまったくなかったし。でも『評価されない、求められないのにサッカーやるって何なんや?』ってことをずっと考えて......。もちろん、ここまで長くプロとして戦ってきたわけやから、選手として『やり切った』と思える終わり方ができたら理想やけど、この先、現役を続けたとして、そんな気持ちになれるのかもわからんかったしね。
でもじゃあ、いざ『引退して何をしよう?』って考えたら、それもない。僕なりにこれまでいろんなことを考えて、行動してきたつもりやけど、いざやめるとなったら、何ひとつ現実的に"仕事"として考えられるものがない。周りから、『引退するなら、うちの会社でこういうことをしてくれないか』的な話もなかったしさ。
つまり、俺、何もないやん、と。だから正直、焦った。あまりに何もない自分にめちゃめちゃ焦った。でも、いつまでたっても考えが定まらなくて。っていうか......正直、この時期はまともに何も考えられなかったというか、考えることをどこかで放棄している自分がいた気もする」
(つづく)
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