オファーはJ3クラブのみ。その時、播戸竜二は初めて「引退」を考えた
ベテランJリーガーの決断
~彼らはなぜ「現役」にこだわるのか
第1回:播戸竜二(FC琉球)/前編
日焼けした顔に満面の笑みを浮かべて、約束の取材場所に現れた播戸竜二(ばんど・りゅうじ/38歳)は、開口一番、こう言って笑った。
J3のFC琉球に移籍した播戸竜二「練習が終わったあと、一旦、家に帰って洗濯をし、それを干してから出てきたわ。やることがたくさんあるから忙しいで、ここは。でも、新鮮でいいわ!」
J3のFC琉球への加入記者会見を終えてから、約3週間後のことだ。「さすが、馴染むのが早いですね」と返すと、意外な言葉が返ってきた。
「正直、加入してすぐの頃はいろんなことが衝撃的すぎて、この毎日を1年間続けられる自信が持てずに、『無理や、やめよう』って思ったけどね(笑)。でも、加入前に描いていた、自分が積み上げてきた経験を生かして......っていう考えは捨てて、というか、正直、そんなものは『ここではいらんな』と思えるようになってからは、逆にすごく楽になった。
クラブハウスなんてもちろんないし、練習場にシャワーがないのも、自分で洗濯をするのも当たり前。弁当が配られても、油モノばかりとか......そういうJ3の現状を知って、今まで在籍したクラブでは常識と思ってきたことが、全Jクラブに通じるものではないということ。俺が加入したのは、『そういうレベルで戦っているクラブなんや』と、受け入れてからは楽になった。
ただ、せっかく呼んでもらってここに来たからには、FC琉球の現状は受け入れつつも、その中で自分は何をするのか、できるのか、するべきなのかを考えながら前を向く1年にしたいと思ってる」
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