引退した鈴木隆行が、指導者キャリアを町クラブの子供から始めるわけ

  • 栗田シメイ●取材・文 text by Kurita Shimei

【鈴木隆行が語るW杯とこの先 前編】

 東京・清瀬VALIANT(バリアント)の練習場では、元日本代表FWの鈴木隆行が、町クラブに所属する13歳以下の子供たちと一緒に汗を流す姿が日常の光景となっている。

 鈴木は、日本代表として55キャップを経験。鹿島アントラーズをはじめ世界中のクラブを渡り歩き、ベルギーのゲンクに所属していた2002年にはチャンピオンズリーグ(CL)への出場も果たすなど、39歳まで現役生活を続けた。2018年1月13日に行なわれた引退試合には、中村俊輔、小笠原満男、藤田俊哉、中山雅史、名波浩など、往年の名手たちが駆けつけた。

 東京都・清瀬市で指導者としてのキャリアをスタートさせた鈴木は、「『人に教えるのってこんなに難しいんだ』と、毎日四苦八苦してますよ」と笑う。指導者としてどんなビジョンを描いているのか。かつての"孤高の点取り屋"に直撃した。

豪華メンバーが顔を揃えた、鈴木の引退試合 photo by Kyodo News豪華メンバーが顔を揃えた、鈴木の引退試合 photo by Kyodo News――まずは現役生活、お疲れさまでした。1月には引退試合も行なわれましたが、現在の率直な心境を教えてください。

「2年前に実質的に引退してから、清瀬VALIANTさんでコーチとしてお世話になり、指導者としての勉強をしたりとバタバタしてましたね。引退試合も本当はもう少し早くやりたかったんですが、スケジュールの都合などで、なかなか実現できなかったんです。ケーズデンキスタジアム(引退試合の会場)には、たくさんの選手、ファンの方が集まってくれて、非常に感慨深いものがありました。今は、指導者としての勉強をしている最中です。A級ライセンスを取得し、今年中にはS級ライセンスを取得する見込みです」

――正直、鈴木さんが指導者としてキャリアを積んでいることは少し意外でした。

「自分でも指導者を目指すなんて微塵も考えていませんでした。それが、30歳を超えていろんな国でプレーし、たくさんの方と話す機会を得られて、『自分が何をしたいか』と考える時間が増えた。その結果、『サッカーしかない。自分の経験を生かさないともったいない』と考えが変わったんです。サッカーの他に心から好きだと言えるものがなかったので、これからの人生でもサッカーに関わっていきたい、と。それで、ジェフ時代から空いた時間に子供たちに教えたりするようになったんです」

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