大岩剛をコンバート。ベンゲルが魔法をかけて、グランパスは変貌した (3ページ目)
リーグ再開後、チームは変貌していた
『中日スポーツ』の名古屋グランパス担当である木本邦彦は、約1カ月ぶりに取材するチームの変貌に驚かされた。
木本は当時、小倉隆史が主力であるU-22日本代表も担当していたため、グランパスのフランスキャンプに帯同せず、同時期にタイで行なわれたアトランタ五輪アジア1次予選を取材していたのだ。
「連係がスムーズになっていたし、選手の動きに迷いがなく、プレーに自信が滲み出ていました。1カ月でこんなにも変わるものなのかと。それと、(フランク・)デュリックスですね。フランスで案内役でも買って出たんじゃないかな。借りてきた猫みたいにおとなしかった彼が、見違えるほどチームメイトと打ち解けていました」
ベンゲルが獲得を熱望したデュリックス(左)とパシ(右) photo by Getty Images 6月17日に行なわれたリーグ再開初戦の相手はベルマーレ平塚だった。
野口幸司、岩本輝雄、名良橋晃、名塚善寛といった日本代表経験者に加え、ブラジル人司令塔のベッチーニョ、ルーキーながら存在感を放っていた中田英寿を擁する強豪である。
そのベルマーレに先制点を許したが、2トップを組む岡山哲也とドラガン・ストイコビッチのゴールで逆転する。その後に逆転されたが、後半3分に平野孝が得意の左足で強烈な一撃を叩き込み、再び同点に追いついた。このゴールについて、平野が回想する。
「左サイドに流れたピクシー(ストイコビッチ)がクロスをヘディングで落として、ピクシーと入れ替わるように中に入った僕がゴール右隅に決めたんです。ピクシーが外に開いて僕が空いたスペースに飛び込む形は、キャンプでずっと磨いてきたプレーでした」
延長戦(当時は前後半15分のVゴール方式)に突入したゲームは延長後半11分、ストイコビッチのCKをトーレスが頭で決めて4-3と競り勝った。オートマティズムが浸透し、動きに無駄がなくなったことで、選手たちには相手の一手先を行く感覚があった。フランスキャンプの成果がさっそく感じられたゲームだった。
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