強いチームから勝てるチームへ。フロンターレ「黄金時代」への第一歩

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 強いものが勝つのではない。勝ったものが強いのだ──。

 そんな名言を残したのは、かつて西ドイツ代表で活躍したDFフランツ・ベッケンバウアーである。

 ベッケンバウアーを擁する西ドイツ代表がW杯を制したのは、地元開催の1974年大会のことだった。だが、当時はトータル・フットボールで世界中を驚かせたオランダ代表に、より多くの称賛が集まり、西ドイツは決勝でオランダを破ったにもかかわらず、オランダこそが「世界最強」と評価する声は多かった。

 そこでベッケンバウアーが口にしたのが、この言葉だった。勝った我々こそが強いのだ、と。

奇跡の逆転優勝を飾って初の栄冠を手にした川崎フロンターレ奇跡の逆転優勝を飾って初の栄冠を手にした川崎フロンターレ 今季J1は最終節での逆転劇で、川崎フロンターレが初優勝を手にした。

 だが、川崎が初めてのタイトルを手にするまでの道のりは、決して平坦ではなかった。ベッケンバウアーの言葉になぞらえるならば、これまでの川崎は「強いチーム」ではあったが、「勝てるチーム」ではなかったのだ。

 川崎が過去、J1で2位に終わること3度。昨季にしてもチャンピオンシップで敗れ、最終順位こそ3位となったが、年間勝ち点では2位だったことを考えれば、実質4度目の準優勝である。

 その他にも、天皇杯、ルヴァンカップ(以前はナビスコカップ)と合わせ、5度も決勝で涙を飲んできた。

 特に風間八宏監督が2012年シーズン途中に就任して以降は、「強いけど、勝てない」傾向が顕著となり、J1最強と言っていい攻撃力を備えていることに疑いはなくとも、いつも最後はタイトルに手が届かなった。風間監督のラストシーズンとなった昨季も、J1と天皇杯で2位に終わっていた。

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