川口能活・41歳に、「いま自分がJ3相模原にいる理由」を聞く (2ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • photo by Nikkan sports/AFLO

「(開幕前に)試合に出ることにこだわってくださいって言われたことが、自分のなかで実はすごいうれしかったというか、何て言うんだろう......肥やしになったんですよね。ベテランがチームで生き残っていく術(すべ)を考えたとき、どうしてもチーム全体を見るだとか、バランスを取るだとか、チームから求められる役割もだいたいそういうものになっていくじゃないですか。でも、そういったなかで、自分が何のために、このJ3のSC相模原にいるのかというのをずっと考えてきた」

 その思いは、今シーズンに限った話ではない。少しだけ時をさかのぼれば、昨シーズンのホーム最終戦、川口は選手を代表してサポーターに挨拶をしたのだが、その声はうわずり、何度も、何度も言葉に詰まった。あまりにたどたどしいスピーチに、周囲は少しざわつき、「緊張しているのでは」「慣れていないのでは」と邪推するほどだった。

 だが、実はそうではない。あのときの川口は、リーグ戦残り3試合でスタメンを外され、ピッチに立てずスピーチしている自分自身に憤(いきどお)っていたのだ。

「試合にも負けていたし、失点も重ねていたので、もしかしたら(先発を)外されるかもしれないという気持ちはあった。当然、ホーム最終戦に出られなかった悔しさもありましたけど、それ以上にいろいろな感情が交錯して、思うように言葉が出てこなかったんです」

2 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る