予想外の凋落。「王者」サンフレッチェ
広島に何が起こっているのか (2ページ目)
3バックはパスセンスに優れるだけでなく、自らボールを持ち運ぶこともできる。彼ら攻撃力の高いDFにボランチが加わって連係し、タイミングよく打ち込まれたクサビの縦パスを合図に、攻撃が動き出す。ピッチ上で何人もの選手たちがダイナミックに連動する攻撃は、見ていて実に迫力があった。
しかも、相手ディフェンスがクサビの縦パスを防ごうと前方向に意識を傾ければ、今度はロングパス1本でいとも簡単にDFラインの背後を突く。広島の攻撃は、そうした駆け引きにも長(た)けていた。
時計の針を巻き戻せば、こうした流麗な攻撃のベースを作ったのは、ペトロヴィッチ前監督(現浦和レッズ監督)だ。そして、それを土台に守備を整備し、広島を勝てるチームに仕上げたのが、現在の森保一監督。4年で3度のJ1制覇という大偉業は、いわば優れた"クリエイター"と"アレンジャー"の合作である。
つまり、結果的にペトロヴィッチ監督が去ってから花開いた広島だったが、こと攻撃に関して実質的に支えていたのは、前監督の"遺産"だった。
FW佐藤寿人、MF森﨑和幸、MF森﨑浩司、MF髙萩洋次郎、MF青山敏弘など、ペトロヴィッチ監督の薫陶を受けた選手が軸となり、流れるようなパスワークから繰り出される、厚みのある攻撃を生み出していた。彼らという確たる軸が存在したからこそ、DF千葉和彦、DF塩谷司、MF柴﨑晃成、FW石原直樹といった移籍加入の選手も、すんなりと広島のサッカーにハマっていった。
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