アントラーズの快進撃はなぜ起きたのか。小笠原満男がその過程を語る (7ページ目)

  • 佐野美樹●取材・文・撮影 text&photo by Sano Miki

 このアントラーズでタイトルを獲ったことがあって、それまでの道のりを知っている人たちからの助言は、やっぱり心強いですよね。しかもみんな、言っていることがブレない。誰に聞いても、同じことを言いますからね。それって、本当にすごいことだと思うんです。だから、選手たちに(その言葉が)響いて、最後はグッとまとまれたんだと思う。本当に、スタッフにOBを集めた功績は、すごく大きいと思います」

 大事なものをいかにうまく伝えていくか。小笠原自身が、現コーチ陣を含めた先輩たちから多くを教わり、感じ取り、結果を出してきたように、自分自身も次の世代に伝え、感じ取ってもらいたいという心情がある。その思いが歳を重ねていくごとに増していったからこそ、ときにはうまく伝わらないことへの苦悩を吐露することもあった。それゆえに、今回の優勝は喜びよりも安堵の気持ちのほうが強かったのだろう。

「やっぱりどんな言葉よりも、一番伝わるのは成功体験だと思うんです。だから、ここで勝ったっていうのは大きいけど......、あとはここからどれだけ勝っていけるかですよね。ひとつ、つかんだから」

 キャプテンとして、7年ぶりにシャーレを掲げ、若い選手たちともようやく同じ景色を見ることができた。しかしその喜びの一方で、小笠原はやるせない思いも抱えていた。

(つづく)

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