サッカー人生は「8割以上が逆境」の富樫敬真が、混迷マリノスを救う (4ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 その可能性を証明するように、2年目の昨シーズンは18試合で5得点を記録した。リオデジャネイロ五輪の候補メンバーに選ばれ、ガーナとのU-23日本代表デビュー戦でゴールをマーク。海外遠征のトゥーロン国際トーナメントにも参加したものの、五輪最終メンバーからは漏れた。

「悪くない1年間だったと思います。でも振り返ると、点を取っても評価を上げられずにへこんだり、もっとやれたな、というのしか残っていません。やっぱり、自分は8割以上が逆境の選手。リオには行けませんでしたが、それがワールドカップで爆発する力になるって信じています」

 新シーズンに向け、富樫は飛躍を誓う。自らのゴールで人々を感動させる。幼い頃、心を震わせた場所で――。これほどの快事はない。

「きれいごとに聞こえるかもしれないけど、感謝の気持ちは自分の力になると思っています。自分がプロ選手になっているなんて、客観的に捉えたら信じられません。だからこそ、関わってくれた人たちに感謝して、そのエネルギーをまた自分の力に換えたいんです」

 それが、逆境を踏み越えてきた男の作法なのだろう。

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