中村憲剛の司令塔は妻「彼女と出会って、僕の人生はすべてが好転した」 (5ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 そんな家の"司令塔"に「全幅の信頼を置いている」と話すのは、本人以上に中村のことを理解しているからだろう。「普段はサッカーについて何も言わない」というが、肝心なときには的確なタイミングで、的確なアドバイスをしてくれるという。

「例えば、身体のどこかが痛くて我慢しながらプレーしているときも、『何回、同じ過ちを繰り返すの? そんなに痛いなら休めばいいでしょ』って言ってくるんです。『無理をして長く休むことになったら、もっとチームに迷惑かけるでしょ』って。僕が無理するところがあるのもわかっているし、普通のときに言えば反発することもわかっているから、一番落ちこんでいる負けた試合後の、バスに乗っているときとかに電話をかけてくる。僕が折れるタイミングをわかっていて、言われるたびに妻の言うことは『間違いないな』って思いますよね」

 中村がプロになって14年が過ぎたが、ほぼ毎シーズン、リーグ戦30試合近くに出場し、36歳になった2016年シーズンも31試合9得点という成績を残せたのは、加奈子さんの支えがあってこそ。ゆえに中村は、あのスピーチの最後に妻への感謝を述べたかったのだ。

「内助の功とは本当によく言ったもので、彼女がいなかったら、たぶん僕はすぐに引退していたと思います。そもそもプロにもなれていなかったかもしれない。だからこそ感謝しかないんです」

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