佐藤寿人が語る「広島愛」。ではなぜ名古屋への移籍を決断したのか? (4ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 ひとりの選手として、ひとりの人間としての葛藤だった。これまでならば、ひとりで考え、決断してきた佐藤だが、「今回はいろいろな人の言葉に耳を傾けてみようと思った」という。信頼のできる限られた人に心境を吐露すると、それぞれが思い思いのアドバイスを送ってくれた。そのなかに、佐藤の信念を呼び起こす言葉があった。

「誰しも人生において後悔しないことなんてないって言われたんです。でも、やらなかったことのほうが、きっといつまでも後悔するって言われました。自分でやったことならば、たとえその後に後悔したとしても、自分で決めて動いたことだから受け止められる。ただ、動かなかったことのほうが、あのときああしておけばよかったと思うはずだって言われて。

 そのとき、思ったんですよね。すべてのことは誰かのせいとかおかげではなく、自分自身がやってきたことによる結果。ならば、自分自身に後悔したくないなって」

 それはストライカーとして生きてきた"佐藤寿人"らしい決断だった。思い起こせば、2005年にベガルタ仙台から広島に加入したときも、ゴールを決めることでサポーターに価値を証明した。もちろん、クラブを思う行動や言動もあったが、彼がゴールを決め続けてきたからこそ、チームはJ1で3度の優勝を成し遂げ、彼はここまで愛される選手になった。振り返れば、佐藤はいつもゴールを奪うことで、自分自身の道を切り開いてきたのだ。

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