「優勝の夢が消えたレッズ戦」。豊田陽平と振り返るサガン鳥栖の今季 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 鳥栖は前半41分の1失点目のショックを引きずったまま、前半終了間際、最終ラインがズルズルと下がり、2失点目を喫した。これで挽回は難しくなった。その2失点目によって、優勝の夢は「点」として潰(つい)えた。

 しかし優勝争いを「線」で捉えた場合、もっと本質的な敗因が見えてくる。

 マッシモ・フィッカデンティが監督に就任した後、サガン鳥栖はファーストステージは降格の危機にあった。一転、セカンドステージでは優勝争いに加わっている。しかし、最後は脱落した。

 その理由はありきたりかもしれないが、メンタルにあるだろう。

「勝負に対する甘さ。チームとしての勝者のメンタリティが足りない」

 フィッカデンティ監督は、懦弱(だじゃく)さを指摘し続けてきた。

 ファーストステージはとにかく勝てない試合が続いている。負けた試合のロッカールームでは、フィッカデンティ監督が怒りを抑えた苦悶の表情を浮かべていた。狂おしいまでの悔しさを伝播させようとしていたのかもしれない。選手が言葉を待っているのも構わず、無言で室内を練り歩く。部屋は静まり返ったまま、監督の革靴が床を蹴る音だけが響いた。手ひどく負けた後はそれが3~4分も続いて、唐突に「解散」と短く言い、去ることもあった。

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