柿谷曜一朗の「代表復帰」を後押しできない、古巣セレッソの迷走

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • photo by AFLO SPORT

 今季のJリーグ開幕にあたり、柿谷曜一朗のセレッソ大阪復帰は大きな話題のひとつだった。

 昨季のセレッソはJ2降格から1年でのJ1昇格を逃し、しかも、シーズンオフにはキャプテンのMF山口蛍がハノーファー(ドイツ)へ移籍。弱り目に祟(たた)り目といった状況にあって、柿谷が戻ってきてくれたことは、これ以上ないほどの心強い援軍である。

 これでセレッソのJ1昇格は揺るがないだろう。そう思わせるだけの"大型補強"だった。

 と同時に、バーゼル(スイス)で試合出場の機会を失っていた柿谷にとっても、自らが置かれた状況を変える絶好のチャンスだった。

 2013年シーズン、J1で21ゴールを記録し、翌夏、満を持してヨーロッパへと飛び立った柿谷。だが、バーゼルでは移籍直後こそ、少なからず出場機会を得てゴールという結果も残したものの、時間の経過とともに出番は減った。2015-2016シーズンに入ってからのリーグ戦出場はわずか4試合。柿谷自身の好不調を計る以前の状態に陥っていた。

 柿谷が持つ類まれなスピードとテクニック、そして、敵はおろか味方さえもあっと驚かせるようなアイデアあふれるプレーを、埋もれさせたままにしたのではもったいない。

 小さな頃から慣れ親しんだ環境で、柿谷が本来の力を存分に発揮できるようになれば、セレッソの力になることはもちろん、長く遠ざかっている日本代表復帰も見えてくる。

 柿谷の周囲で、そんな期待が高まるのも当然の成り行きだった。

 しかし、これまでのところ、事は期待通りには進んでいない。それが率直な印象だ。

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