福田正博が分析。五輪代表・手倉森監督が見せた「勝負師の采配」 (4ページ目)

  • 津金一郎●構成 text by Tsugane Ichiro
  • 松岡健三郎●撮影 photo by Matsuoka Kenzaburou

 このことを彼が意識して実践しているのかどうかはわからないが、独特の"間"が選手とのコミュニケーションでうまく作用しているはずだ。また、わかりやすく強い言葉を使うのも彼の特徴で、選手との相互理解を助けているのだろう。

 そして、出身地である青森の方言のイントネーションが残る語り口、監督だからと偉ぶらずに、選手と対等に接する姿勢があったからこそ、選手との間に壁ができずにチーム一丸の雰囲気をつくりだせたのだと思う。

 チームづくりの手腕は、早い段階から割り切ったのが好結果につながった。今回の最終予選がホーム&アウェーではなく、カタールでの集中開催となった時点で、チームに軸をつくらずに全員で戦う姿勢を打ち出した。

 ホーム&アウェーならば、ある程度時間をかけての戦いになるため、軸となる選手を中心にしてチームの地力を100、120、150と伸ばしていくことができる。しかし、集中開催の場合、今回のように中2日で試合に臨むこともある。そのため、軸を作ってチームの地力を上げることよりもコンディショニングを優先した。

 地力が90あるとしたら、どの選手が出場しても100%の力が出せて、チームが持つ力をフルに発揮できるチームづくりに徹した。実際、今回出場した4グループ全16チームの中で、日本はもっとも良いコンディションを保つことができていた。つまり、地力が100以上あるライバルが連戦の疲労でチーム力を80、70と落としていくなかで、90の力を十全に発揮し続けた日本が優勝したといえる。

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