福田正博が名波監督に聞く。ジュビロJ1昇格の壮絶な「舞台裏」 (5ページ目)

名波　もちろん、知っていましたよ。点が入って、試合が動くたびに、逐一情報は入ってきました。後半に入ってからも、岐阜が同点ゴールを決めて、そこからまた、福岡が勝ち越して、３点目を取って、４点目を取って……というのは聞いていました。でもそれ以降は、「もういいよ、来るな」ってスタッフに言いました（笑）。

名波浩（ななみ・ひろし）／1972年11月28日生まれ。静岡県藤枝市出身。2014年シーズン終盤、J2で戦う古巣・ジュビロ磐田の監督に就任。同年のJ1昇格は逃すも、翌2015年シーズン、自動昇格圏内の２位という結果を残してJ1昇格を決めた。現役時代は日本代表の「10番」を背負って、日本初のＷ杯出場に貢献した。福田　バタバタバタっと、福岡がゴールを決めたからね。「（岐阜の）ラモス監督、頼むよ」と思ったんじゃない（笑）。

名波　どちらかと言えば、ヨシカツ（※）に、だね（笑）。「ヨシカツがスタメンだよ」って聞いていたからさ。
※岐阜のGK川口能活。ジュビロのOBでもあり、名波監督とは同じ清水市商高の後輩でもある。

福田　試合前の段階で、福岡とは得失点差が５あったけど、その差を逆転される心配はした？

名波　後半、うちが１点取った時点で６点差になって、１－１に追いつかれた福岡は、総得点で上回るうちを逆転するには、あと７点取らないといけないわけでしょ。残り時間が30分くらいで、さすがにそこまでは取れないだろうとは思っていました。

福田　ところで、先制ゴールを奪って、１点リードしてからは戦い方を変えたりしたのだろうか。

名波　いえ。でも、急にボールを蹴り出したんで、「落ち着け」「（ボールを）つなげ」って、言っていたんですが……。MF小林祐希には「もっと顔を出して、ボールをサイドに展開して落ち着かせるように」と指示して、両サイドバックには「適当なボールじゃなくて、質のいいボールを上げろ」と。

福田　それで、選手たちは落ち着いたの？

名波　ぜんぜん落ち着いてなかったですね。