2015.10.18

【育将・今西和男】オフトが振り返る。「あの試合、イマニシがいてくれたら」

  • 木村元彦●文 text by Kimura Yukihiko photo by Kyodo News

『育将・今西和男』 連載第11回
組織を育(はぐく)む(3)

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W杯アメリカ大会予選で、イレブンに指示を出すハンス・オフト(中央)

 来日したハンス・オフトに対して、今西が提案したのは役割分担の明確な線引きであった。ピッチの中のことに関してはすべて現場指揮官であるあなたに任す。一方でその監督の評価も含めた強化、育成、編成人事、広報については自分が行なう。互いに尊重し合って越権行為はしない。それはまた、ドラスティックにチームを変えようとしたオフト自身の要望でもあった。

 ヤマハでは2か月だけの短期コーチであったオフトが、初めてシーズン前のキャンプから日本のチームを見てもらした感想は「選手が人間としてまだ自立していない」というものであった。ヨーロッパから来たプロの指揮官の目には、マツダの選手は終身雇用の会社に入って漫然とサッカーをしているように映った。

「なぜ、自分はサッカーをするのか、自分の人生においてそれはどのように意味を持つのか。それを突き詰めて考えているようには思えない」

 今西にこう求めてきた。「選手がコミュニケーションを取れないのか、取ろうとしていないのか。外国語が出来ないのは仕方がないが、私から積極的に何かを吸収しようとしなければ意味が無い。そこが物足りない。グラウンドの外の仕事として、普段の生活から彼らが自立したコミュニケーションを取れるように教育して欲しい」

 今西の選手に対するコミュニケーション教育は、ここから始まったと言ってもよい。試合ごとにレポートを書いて提出すること、人前でスピーチをすること、さらにはマツダの監督はオフト以降も外国人と決めていたので、英会話を学ぶことも求めた。