なぜハリルホジッチ監督は槙野智章を重用するのか? (3ページ目)

  • 津金一郎●構成 text by Tsugane Ichiro photo by Yamazoe Toshio

 ただし、選手として際立った特長がある槙野には、不安材料もある。それは4バックのCBとしての経験値の低さだ。槙野は2006年にJリーグデビューしてから現在に至るまでほとんどの時間を、3バックを基本布陣にするペトロビッチ監督(2012-浦和/2006-2011広島)のもとでプレーしてきた。そのため4バックの中央で守備をする経験が圧倒的に足りない。

 経験が少ないことで懸念されるのがポジショニングだ。浦和では3バックの左ストッパーの槙野は、中央にCBが残っているので後方のカバーが常にいる。そのため、いいポジショニングを取ることよりも、高い身体能力を武器にアグレッシブな守備を優先してきた。しかし、4バックでは2人のCBが密に連係を取りながら、「カバー」と「チャレンジ」をして相手を押さえなくてはならない。そうした点での槙野の経験不足は否めない。

 こうした経験を所属クラブで積むことができればいいのだが、浦和が3バックを採用しているため、槙野が4バックの経験を積める場が日本代表にしかない。これは、ハリルホジッチ監督にとって悩みの種なのではないだろうか。

 どんな選手でも必ずミスをする。その「トライアル&エラー」から学んだことを次に生かすことで成長につながるものだが、CBの試合経験の場が代表戦しかない槙野にとっては、その機会が限られてしまい、しかも、代表でのミスは日本の敗戦に直結し、大きな批判に晒されることになる。そのプレッシャーを受けた槙野が、消極的になって堅実さを優先するようになると、アグレッシブな守備という彼の持ち味が発揮されにくくなる可能性もある。

3 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る