2試合で表出したアギーレJの「3つの課題」 (4ページ目)
現在の世界のサッカーのトレンドは、縦に速いサッカー、つまり、ゴールに直結するダイレクトプレーの多いスタイルになっている。後ろでゆっくりボールを回しながら相手を崩すよりも、縦パスを素早く入れた方が相手の脅威になり、相手のミスを誘発しやすくなる。
たとえば、ブンデスリーガのドルトムントの場合、センターバックが縦方向にフィードを蹴る回数が多いため、ほかの欧州のクラブのセンターバックよりパス成功率が低いが、縦にスピーディーでアグレッシブなサッカーを実現している。そういったサッカーへと日本代表のスタイルを転換させていくために、アギーレ監督は、あえて中盤にビルドアップ能力の高い選手を起用しなかった可能性もある。
ただ、そのサッカーを実行するには、20m、30mの距離のロングフィードを正確に蹴る能力がDFに求められる。フィードの精度が低ければDFラインから前線に蹴り込んでいるだけになってしまうからだ。
また、フィードを受けてボールをおさめる1トップとサイドのFWには「強さ」が求められるが、日本にはそういう選手がなかなか存在しない。こういった問題に対して、これからアギーレ監督がどんな手腕を発揮するのか楽しみにしたい。
まだアギーレ・ジャパンは始まったばかり。新しい選手たちが日本代表に呼ばれ、試合に起用されたことで、日本人選手全員へ「日本代表への門戸は、誰にでも開かれている」とアピールできたのではないか。
今月のアジア大会に出場する若い選手たち(U-21)のなかからも、今後代表に招集される選手が多く出てくるだろう。10月、11月と4試合あるテストマッチで、どんな選手が呼ばれて、どういったサッカーを見せてくれるのか、注視していきたい。
著者プロフィール
福田正博 (ふくだ・まさひろ)
1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。中央大学卒業後、1989年に三菱(現浦和レッズ)に入団。Jリーグスタート時から浦和の中心選手として活躍した「ミスター・レッズ」。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王。Jリーグ通算228試合、93得点。日本代表では、45試合で9ゴールを記録。2002年に現役引退後、解説者として各種メディアで活動。2008~10年は浦和のコーチも務めている。
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