和製C・ロナウド。武藤嘉紀がアギーレJの「顔」になる (3ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • photo by Masashi Hara/Getty Images

 圧巻だったのは、自身のゴールで同点に追いつき、なおも勝ち越しを狙ったロスタイムのプレイだ。

 自陣に戻って守備態勢を取り、自らボールを奪い取ると、味方とのパス交換を挟んでドリブルで疾走。これは惜しくも決勝点にはつながらなかったものの、試合の最終盤でも衰えないスピードとスタミナ、加えて最後まで諦めずにゴールに向かう勝利への執念をもうかがわせた。

 本人は「ひたむきに泥臭くプレイすることを心掛けている。それが毎試合のパフォーマンスにつながっている」と語るが、まさにそのとおりなのだろう。鹿島戦は代表メンバー発表後、初の試合だったが、「モチベーションはいつもと変わらない。代表を意識してしまうと力が出せない。自分のプレイをしていこうと思った」と話したように、力みから空回りするようなところはまったく見られなかった。

 さて、いよいよ週明けの9月1日からは日本代表のトレーニングがスタートする。武藤にとっても代表選手としての第一歩である。

「ケガもなく、コンディションはいい。あとは委縮することなく、自分の特徴であるドリブルや裏への飛び出しなどを出せたらいい。(日本代表は)みんな、憧れの選手。いいところを盗みたい」

 期待の新星は、ピッチ上でむき出しにする闘志とは似つかわしくないほどの甘いマスクに穏やかな笑みを絶やさず、あくまで謙虚にそう語る。

 だが、今の武藤なら新生・日本代表を象徴する存在になれるはず。そんな期待をさせるだけの気配が十分に漂っている。

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