出場機会0。ブラジルでの現実を受け止めた齋藤学 (6ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by JMPA

「サイト-にはゴールゲッターとしての素質がある」

 そう語ったのは、ジョゼップ・グアルディオラに認められたスカウティング力を持ち、デポルティボ・ラ・コルーニャに選手を推薦することもあるスペイン人ジャーナリスト、ヘスス・スアレスである。

「まず、スピードは目を見張るものがある。それは緩急の変化によって生み出されているものだろう。どこでアクセルを踏み、どこでブレーキを踏むのか、“運転”が非常にうまい。まるで熟練したレーサーのようだ。とりわけ、一度止まってから駆け出すときの瞬発力は舌を巻く。日本人MFには香川真司や乾貴士のようにアジリティに長(た)けた選手は多いが、サイト-もその一人と言えるだろう。

 エリアに近づいたときのプレイは、クリスティアーノ・ロナウドやアリエン・ロッベンを彷彿とさせる。彼らほどの馬力はないものの、マーカーを剥がし、ゴールに向かうときの力強さに共通点を感じる。ドリブルシュートは最後に余力がなくなる、もしくはバランスを崩すものだが、彼にはその気配がない。独力でゴールを奪える、という点では、“戦術外の選手”で、それ故に交代出場でもすぐに試合にフィットできる」

 齋藤は捲土重来(けんどちょうらい)を誓った愛媛で、ゴールによって存在感を主張した。カテゴリーを下げ、期限付き移籍した場合、アタッカーは“ある程度の活躍”では埋もれてしまう。数字を残すことで、高い評価を得られるのだ。

 2012年にマリノスに戻ってからも、彼はゴールに向かって勇敢にプレイすることを続けている。

「いつもではないんですが、無敵になっているような感覚のときがあるんです。無意識にプレイできるというか」と齋藤は白状する。

「そのときは一個ミスしたとしても、次のプレイでいいプレイが必ず出せて、ミスにならない。(2013年シーズンに)広島戦でドリブルからゴールを決めているんですが、その前にはクロスをうまく合わせられていなかった。でも、またパスを預けてくれたから、もう一度ドリブルで入っていけたんです。もっとそういうシーンを増やせていけたらと思っていますね」

続きを読む>>

6 / 6

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る